王子様は甘いのがお好き
ざわついたこの空気に、
「ええ、そうですよ」

社長は椅子から腰をあげると、私の隣に歩み寄った。

「僕と佃さんはおつきあいをしています」

社長は私の肩を抱き寄せると、ニコッと彼らに向かって笑いかけた。

有無を言わさないと言う社長の雰囲気に、重役たちは口を閉じた。

さすが、社長だ…。

あっと言う間に黙らせちゃったよ…。

この場が黙ったことを確認すると、社長は唖然とした様子の田原に視線を向けた。

「処分はこちらの方で検討させてもらうよ。

まあ、少なくとも今まで通り営業課にいることはできないと思った方がいいかも知れないね」

そう宣言した社長に田原の目から色が消えた。

その様子は、まるで死刑を宣告された囚人のようだった。
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