王子様は甘いのがお好き
その日の昼休み、私はいつものように社長に呼び出された。

「広まっちゃいましたね」

そう言った私に、
「隠すことでもないからいいんじゃない?」

社長は髪から顔をあげた。

そうと言えばそうだけど…やっぱり、恥ずかしいと言えば恥ずかしい。

「芽実」

社長が私の名前を呼んだかと思ったら、
「――ッ…」

私の唇が彼の唇と重なった。

唇が離れると、
「――あの…今度は、私からしてもいいですか?」
と、社長に声をかけた。

「えっ?」

訳がわからないと言うように、社長は目を丸くした。

「…何と言うか、したくなりました」

呟くように言った私に、
「いいよ、いくらでもどうぞ」

社長はフッと笑って目を閉じた。
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