【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ～俺様社長の極甘な溺愛包囲網

「赤城さん？」

何か言われる前に、先手を打つ。

「ちょっとわたし、用事を思い出したからお先に失礼するね」

こんな時間に用事もなにもないだろう。自分の言い訳があまりにも下手すぎる。

けれど後には引けずに、引きつり笑いをしながら二、三歩後退（あとずさ）るとくるりと向きを変えて、エレベーターホールへと早足で歩いた。

カツカツとヒールの音を響かせて、できるだけ早くこの場から離れることだけを考えた。

そんな距離などないはずなのに、やっとのことでたどりついたエレベーターホールでボタンを押そうと手を伸ばす。

しかしわたしよりも一歩先に、男性の手が伸びてきて先に下へのボタンを押した。

振り返るとそこには、駿也の姿があった。

彼の姿を捉えて、一瞬固まってしまった。エレベーターの扉が開く気配がして、ハッと我に返る。

「乗らないのか？」

駿也が声をかけてきたけれど、わたしは答えることなく無言でエレベーターに乗り込む。

すると駿也もあたりまえのようにわたしの後を追ってきた。

軽くにらんでみたけれど、そんなことはどこふく風。まったく気にしていない様子で【１】と【閉】のボタンを押す。

するとすぐに扉が閉まり、箱の中に完全にふたりっきりになってしまった。

エレベーターが動き出すと同時に、駿也が口を開く。