【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
そして約束の金曜日。

お昼を買いにコンビニに向かったわたしは、皆川くんにつかまった。

「おい、なんで連絡してこないんだ。今日の約束忘れたわけじゃないだろうな」

「ひえっ、ちょっと後ろからいきなり話かけるのやめてください」

声の主がわかり、振り返りざまに声を上げた。いきなり廊下で呼び止められて変な声が出た。

わたしの前に立つ皆川くんはすごく不機嫌そうだ。

「約束忘れてないよ。時間と場所は会ったときに確認しようと思って」

「連絡ないから逃げるつもりかと思った。七時に駅の裏の時計台な。遅れるなよ」

皆川くんは要件だけ告げるとさっさと歩き出してしまう。二、三歩歩いたあと振り向いた。

「逃げるなよ」

言葉とともに指先をビシッと突きつけられたわたしは、コクコクと高速でうなずく。

それを見てうなずいた彼は、満足したのか踵を返して歩いて行った。

その背中を見てハッとする。

通用口へ向かう廊下には人影はほとんどなく、誰にも見なれていなかったようだ。

皆川くんは『なんで連絡してこないんだ』と言っていたけれど、実はずっと連絡をしようとは思っていた。

けれど自分から積極的に男性に連絡をとったことがないわたしには最後の通話ボタンを押すことは、すごくハードルが高くて何も出来ないまま今に至ったのだ。

もしかしたら、また同期や社内での飲み会かもしれない。

もしかしたら、からかわれているだけなのかもしれない。

そう思っていたけれど、さっきの口調からすればどうやらふたりっきりらしい。

はぁ……大丈夫なの、わたし!?

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