【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
……どうしよう、お金大丈夫かな。

「何だ、どうかしたのか?」

不安になっているわたしに気がついたのだろう。

わたしはお品書きで口元を隠しながら、恥をしのんで白状した。

「いや、あの……ずいぶん高そうなところだから、カード使えるかなぁって……」

「はぁ? 何言ってるんだ。俺が誘ったのに、お前に払わせるわけないだろ?」

「え、でも……」

食い下がろうとしたわたしだったが、カウンターの中から差し出されるおしぼりにそれを遮られた。

「おしぼりどうぞ。女将の千代子(ちよこ)です。主人とふたりでこのお店をしているのよ、こぢんまりとした店だからお金のことなら気にしないでね。

もらえる人からたくさんもらうことにしているの。うふふ」

笑顔の女性はクリーム色の綺麗な着物を身につけている。

その上に割烹着を着ていてとてもやわらかい雰囲気に癒やされた。

「そうですか。すみません、あんまりこういう場所に来たことがないので……」

顔が赤くなってしまったわたしに、千代子さんはチャーミングな笑顔を向けてくれた。

「あ、でも駿也くんは最近稼いでいるって聞いたから、たくさん頂いちゃおうかしら?」

「勘弁してよ、千代子さん」

皆川くんはおしぼりを受け取りながら、にこやかに笑った。

「赤城、暑いし一杯目はビールでいい?」

「あ、うん」

わたしの返事を待った千代子さんは「かしこまりました」と奥に戻っていった。
< 36 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop