【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
「ほんと、変な奴だな。黙っておごられてればいいのに」
「だって、理由がないもの。ただより高いものはないって言うでしょう?」
自分で言って、失敗したなと思った。なんてかわいげがないんだろう。
だけど皆川くんは、声を出しておかしそうに笑っている。
「たしかにな、俺もしっかりお礼をしてもらうつもりだし」
「えっ!? いや、ちょっと困る。わたしお給料そんなにもらってないんだからね」
短大卒の一般職のわたしと、一年目でも注目されるほどの営業成績をあげる皆川くんとの給料は大きくかけ離れている。
「安心しろ。金が必要だとは限らない」
「仕事でこき使うつもり?」
思わず眉間に皺を寄せて彼を軽くにらむ。
「なんでそんな色気のかけらもない答えなんだよ、まったく」
クスクス笑いながら、彼は日本酒をおかわりしていた。
色気? なんのことだろう。そもそもわたしに求めるモンじゃないと思うんだけどな。
自分でつっこんで悲しくなったので、これ以上は深く考えないようにした。
それから皆川くんとの会話は、思ったよりもずっと楽しかった。
同期とはいえ、これまで距離があったのが嘘のように、お互い色々な話をして、大いに食べて、大いに笑った。