【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
「ごちそうさまでした」

引き戸に手をかけて見送ってくれている千代子さんに、頭を下げる。

「いえ、またぜひいらしてくださいね」

「はい。また来ます」

「ほら、行くぞ」

先に歩き出した皆川くんに続いて外に出た。

夜になったとはいえ、昼間の熱気がそのまま残っているような暑さの中、ふたりで歩き始めた。

なんとなく駅の方へ向かっている。もう帰るのかな……。

快気祝いと称した食事が終了したのだから、帰宅するのはあたりまえだろう。

けれどわたしはそのとき、名残惜しさを感じていて「帰る」とはっきり言えないでいた。

「ちょっと、コンビニ寄っていい? アイス食おうぜ」

いい? なんて聞きながらわたしの返事なんて待っていない。

「え? ちょっと待って」

なんて自分勝手なんだろう。

だけどそれが決して嫌じゃない。

振り回されるのが楽しいなんてどうかしていると思いながらも、彼の後について行く。

「なんで、酒飲んだ後にそんな甘いアイス食うんだ。絶対こっちだろ」

わたしの選んだチョココーティングされたバニラアイスを見て、文句をつけてきた。

「好きなんだもん、別にいいでしょ?」

「絶対こっちだって」

彼が選んだのはクマの絵が描かれているソーダバー。

たしかにそれも美味しいけれど、今の気分じゃない。
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