【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
何もかもが彼の思い通りになってしまっている。
目の前にある料理を見て、そう思うしかなかった。
二十一時少し前。仕事を終え帰宅の途に就いているはずの時間だったが、わたしはなぜか【よし丘】のカウンター席に座っている。
そして隣には当たり前のように駿也が座っていた。
その日、日程や内容などの打ち合わせを部長を交えて行っていた。
粗方方向が固まったのはすでに十九時をまわっていた。
「どこか食事でも」と言い出したのは部長だったのに、いざ向かうとなったときにいきなり「娘が熱を出したから帰る」なんて言い出した。
理由が理由だからダメだとは言えず、部長を見送った後わたしは「では、また次回ということで」と笑顔で駅に向かおうとしたところが、なぜだか気がつけばこのカウンターに座っていた。
「うれしいわ。またふたりで来てくれて」
駿也にビールを注ぎながら、千代子さんはにっこりとほほ笑んだ。
つき合っているときは頻繁に訪れていたこのお店にも、別れてからはすっかりと足が遠のいていた。
千代子さんには義理を欠いた形になってしまっていて、この店の敷居は高くこうやってまた食事ができるとは思っていなかった。