【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
この若さでニューヨークで実績を残し、会社を経営しているのだからあたりまえなのかもしれない。
でも昔から彼の仕事に対する真摯な姿勢が変わっていないことを知って好ましく思う。
きっと彼にとっては、小さな仕事のひとつに違いないのに。
それでもこんなふうに時間をとってくれていることがうれしい。
「じゃあ、この方向で行くとして、仕事の話は終わり……って、帰るとか言い出すなよ。興ざめだ」
なんでわかったんだろう。いいタイミングだと思ったのに。
「ここまで頑張ったんだから、もう少しつきあってくれてもいいだろ?」
「そうよ、せっかく来てくれたんだから、久しぶりにアレ食べたくないか?」
あれって……。
「天茶漬け!」
「ご名答!」
からからと楽し気な笑い声をあげた千代子さんが準備のためにカウンターから離れた。
「なんかここは、昔と全然変わらないな」
「そうだね」
その言葉をきっかけにどちらからともなく、昔の話をし始めた。
駿也は「そんなことまでよく覚えてるな」とわたしに言ったけれど、彼だって小さなことまでよく覚えていた。
それは懐かしい味の天茶漬けを綺麗に平らげた後も続いた。
そして以前と変わらぬ笑顔で千代子さんに見送られたわたしたちは、どちらからともなく歩き出した。
以前と同じ道をふたりとも迷うことなく。
「こんなふうに、駿也とまたこの道を歩くなんて思ってもみなかったから、なんか不思議」
わたしの言葉に彼は少し時間をあけて返してきた。