【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
ある日、お昼を買いに出たときにふとひとりの三十代後半くらいの男性に声を掛けられた。
銀縁のフレームに寸分の狂いのないスーツの着こなしは、彼の神経質な性格をうかがわせる。
「赤城ひよりさんですよね」
「はい」
こんな人、お客様の中にいたっけ?
警戒するわたしの様子を見て、男性は苦笑を浮かべた。
「そんなに怖がらなくて大丈夫です。私はどちらかと言えば、あなたの味方ですから」
「どういうことでしょうか?」
向こうの態度に不信感をもったわたしは、冷静に対応しようと努めた。
「あなたは今、皆川駿也氏と付き合っていますね。すぐに別れたほうがいい」
なんでそんなプライベートなことを、見ず知らずの人が知っているの?
怖い。その一言だった。
相手もわたしの気持ちを感じ取ったのか、意地の悪い笑みを浮かべる。
「どうして? なんて思っているんでしょうね。あの男はあなたが付き合えるような男じゃない。真剣になればなるほど、あなたが傷つくことになる」
ふとロッカールームで聞いた、あの噂のことが頭をよぎった。
何か知っているらしいこの人物は誰なのだろう?
「あなたは一体誰なんですか?」
相手の言葉に心の中がかき乱された。
それでもわたしはなんとか自分を保ち、相手のことを聞き出そうとする。
「そんなこと知ってもどうにもならないでしょう。まあ皆川家に近い人物とだけでも言っておきましょうか」