【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
駿也のマンションの前の植え込みに座り込んで彼の帰りを待った。

直帰するって言っていたのに、まだなのかな?  

合鍵は渡されていたものの自宅に置いてきてしまった。

取りに帰ることも考えたが、終電に間に合わなくなってしまうかもしれない。

それに鍵をもらっていると言っても、何の連絡なしに部屋に入るのは気が引ける。

もし他の人が部屋にいたら……ダメダメ、変なこと考えちゃダメ。

信じたい、信じられない。そんな気持ちが入れ替わり立ち替わり胸の中を支配する。

とにかく、駿也と話をするまで何も考えないようにしよう。

「ひより?」

名前を呼ばれて顔を上げた。そこには待ちわびていた駿也がこちらに向かって掛けてくる姿があった。

「駿也……」

「どうしたんだ、一体。こんな遅い時間に。電話くれれば――」

その言葉に心の中に澱のようにたまっていた、怒りや、悲しみ、不安、そんな黒い感情が一気にあふれ出してしまった。

「何度も連絡した」

自分でも驚くほど冷たい声が出た。

「あ、いや。悪い。とにかく中に入ろう」

自分の失敗に気がついた駿也は、気まずそうに髪をかき上げた。
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