夢原夫婦のヒミツ
蘭は昔からこうと決めたら一歩も引かない性格だ。

「ものは試しでしょ? もしかしたらこれをきっかけに、大和さんの気持ちに火が点いちゃうかもしれないじゃない?」

なんて言ってひとりで勝手に盛り上がっている蘭には悪いけど、そんなうまくいくとは思えない。

やっぱりここは佐介の言う通り、勇気を出して自分の気持ちを素直に伝える以外、術はないのかも。

「とにかく今度の休みに、ふたりで出掛けること! わかった!?」

だけど蘭の迫力に負けて、私と佐介は「はい」と返事をした。すると満足した蘭は、「ちょっとトイレ借りるね」と言いながら、私にトイレの場所を聞き、リビングを出ていった。

ドアが閉まる音と同時に、私と佐介は自然とため息を漏らし、ふたりして苦笑い。

「本当に蘭には参るな」

「……うん」

珈琲を飲むものの、冷めていた。残りのタルトにフォークを伸ばしながら、ふとテーブルにある卓上カレンダーが目に入る。
< 127 / 244 >

この作品をシェア

pagetop