夢原夫婦のヒミツ
お言葉に甘えて浴室に向かい、お風呂に浸かると一日の疲れが取れる。

「気持ちいい……」

大和さんに言われた通りゆっくりと浸かっていると、どうしても考えてしまうのは蘭と佐介のこと。

蘭にはあんなことを言ったけど、本音を言えばふたりにはうまくいってほしい。

佐介の気持ちが蘭に届くといいな……。

蘭も佐介も私にとってかけがえのない存在で、大切な友人だから。昔からふたりにはたくさん助けられてきた。

家族を失った時も、大和さんに恋している時も。今日だって蘭は私の話を親身になって聞いてくれて……。

「本当に私も、キスだけじゃ物足りなくなるのかな……」

今はまだ、そうなる自分が想像できない。そうなっちゃう自分さえ恥ずかしく思うし。

でも蘭が言う『肌と肌を重ねるだけで私は愛されているんだって自信がつく』って言葉には、ちょっぴり共感できる。

だって私も大和さんとキスできただけで、大丈夫、ちゃんと大和さんに想われていると実感できたから。

「どんなに幸せな気持ちになるんだろう」

それはきっと経験してみないとわからないこと。そんな日が早くくるといいな。

この日の夜も、大和さんと同じベッドで眠った。彼のぬくもりに包まれながらそう願うばかりだった。
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