夢原夫婦のヒミツ
そして長年ずっと蘭に片想いをしている。鈍感な蘭は佐介の気持ちにはまったく気づいておらず、三人で会う時はできるだけふたりの時間を作れるように、わざと今日みたいに遅れてくるようにしているんだけど……。

チラッと佐介の様子を窺うと重なり合う視線。

すると彼は私が言いたいことを理解したのか、「すまん」と言うように苦笑いした。

これはどうやらなにも進展はなかったようだ。

佐介はずっと蘭一筋だった。でも幼なじみの関係を壊す勇気がなく、好きって気持ちを彼は一度も蘭に伝えていない。

それとなく態度で示しても気づかないし……。

だから蘭は高校、大学とそれなりに異性と付き合ってきた。でも誰とも長続きしなかった。

おかげで佐介は蘭の恋愛事情に一喜一憂しては振り回されている。

就職活動がはじまり、社会人になってからずっと誰かと付き合っているって話は聞かないけれど……。蘭は正直、佐介のことをどう思っているのだろうか。
< 21 / 244 >

この作品をシェア

pagetop