夢原夫婦のヒミツ
あれほど眠れなかったのに、たくさん泣いて疲れて寝ちゃったのかもしれない。

泣いたせいで目が重い。

タオルを濡らして目元を冷やそうかと思った時、ドアが開いた。

「おはようございます。鈴木さん、朝の検温をさせてください」

「あ、おはようございます」

嘘、もうそんな時間なの?

慌てて顔を伏せたものの、部屋に入ってくる時に泣き腫らした目を、ばっちり看護師さんに見られていたようだ。

「検温が終わったら、目を冷やすものを持ってきますね」

「……すみません、ありがとうございます」

恥ずかしい。これじゃずっと泣いていたの、バレバレだよね。

ますます看護師さんの顔を見ることができなくなり、受け取った体温計を脇の下に挟み、血圧を測ってもらう。

「でも安心しました」

「――え」

血圧を測り終えた看護師さんが言った言葉に、思わず顔を上げてしまう。

安心したってどういうこと?

すると看護師さんは目を細めた。

「私は泣くことも大切だと思います」

泣くことも大切……?
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