夢原夫婦のヒミツ
ずっと文通だけのやり取りを続けていたのに、実際に会ったらもう文通をするだけの関係に戻りたくなくて、『これからはメッセージでやり取りをしてくれませんか? できれば、お休みの日にまたこうしてお会いしてほしいです』と――。

それからだ。私たちの関係が大きく変化したのは。

月に一度のペースで休日に会ってくれるようになった。

会うと言っても、一緒に食事をして時には買い物に付き合ってくれたり……。

他愛ない話を楽しみながら、私は会うたびに聞いていた気がする。『大和さん、恋人はできましたか? いい人は現れましたか?』って。

その度に彼は笑いながら『いるわけないでしょ』と言っていて、安心していたのをよく覚えている。

だけど大和さんも毎回必ず同じことを聞いてきた。

学校生活はどうか、困っていることはないかなど、心配してくれていた。

それが最初は単純に嬉しかったんだけど、恋愛対象に見られていない気がして、必死に大人になろうと背伸びしていた気がする。

日比谷さんと出会ったのも、この頃だった。
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