その出会い、運命につき。
お腹も心も満たされてお店を出るとき、胡桃さんがスマートにカードでお支払をしてくれていた。
お店の外でお財布を出して半額払おうとすると、それを手で止められる。

「俺が誘ったから、今日は俺の奢りで。」
「でも、私いっぱい食べたし…。」

美味しさのあまり箸が進みまくって、もしかしたら胡桃さんよりもガツガツ食べていたかもしれない。
それくらい、満腹なのだ。
それに、先にこのお店の話を出したのは私だし。

私が譲らない態度でいると、胡桃さんは「じゃあ…」と一呼吸おいて言った。

「またどこか食べに行こう。その時は君が払って。」

それは、頷くしかないと思いませんか?
それ以外の選択肢は、あいにく今の私は持ち合わせていない。

「…お願いします。」

私は素直に従う。
胡桃さんは満足そうな笑みを称えた。
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