mirage of story










水竜はずっと私を見守っていてくれた。
私と共に在ってくれた。


水竜は誰より何より、私という存在に近い存在だ。
だからこそ分かってくれるのだろう。この私の決意も想いも全て。

だからこんなに水竜の言葉が心強いのだろう。
ずっとどんな時でも、最期まで私を見守ってくれると私は知っているから。












"雲の下に降りるぞ"


私達の下にあった雲が、水竜の掛け声と共に真横までやってくる。
スッと手を伸ばして雲を掴むと、水滴になって私の手を潤した。

私と水竜はそんな雲の海の中に潜っていく。
視界が淡い白の闇に覆われた。





ブワアァァッ―――ザッ。

薄い雲の層が何層もあって、その中をすり抜け潜り抜ける。
そして最後の雲の層を抜ける、すると白い闇に覆われた視界に大地の色が映った。



地上だ。
私はそう思い水竜の背に掴まりながら四方を見渡す。



三方に広がるのは大地。遥か空の上からでは状況はよく分からなかったが、その大地の遠く向こうには点のように見える人の姿があった。

振り返れば大きな湖があった。
これがジスが見せてくれた地図に描かれていた湖で、私達はこの湖を渡ってきたことを実感する。










此処の何処かに、彼が居る。ライルが居る。
この大地に。戦場に。

私は唾をゴクリと飲み込む。



そんな私を乗せて水竜はゆっくりと旋回をしながら高度を下げていく。










"............嫌な匂いが充満している。

血と争いと闇。
どれも人という生き物が生み出してしまった哀しい匂いだ"



哀しい匂い。
私にはその匂いは捉えられなかったけれど、感覚で分かった。

此処には、哀しいこの世で負と云われるものが満ちている。
それは私にも分かった。








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