mirage of story









"では―――行くぞ!

振り落とされるのではないぞ!拾いに行くのは面倒なのでな?
しっかりと我が背に掴まれ!"



水竜はそう叫ぶと甲高く迫力のある雄叫びを上げた。
そして私は水竜の背に、しっかりとしがみついた。





ブワアァァッ!

次の瞬間に私を乗せた水竜は風を切るように、空を駆け出す。
周りで私達を取り巻く雲達が、まるで避けるように後ろへと流れていくのが見えた。



船などより、ずっと早い。
やはり竜という生き物は、人とは比べてはならない程に凄い存在なのだと私は肌一杯で感じた。







........。
何も言葉を交わさず、私と水竜はただひたすらに風を切る。
淡く白い薄く広がる雲の上に美しい蒼い一線を描きながら、私は水竜の背に掴まりもう直に来るその時をただ静かに待ち構えていた。


覚悟、不安......そして少しだけまだ私の中に残された期待。
ごちゃごちゃに入り混じったその全てを抱え、私は流れていく雲を見ていた。












"数刻飛べば着く。
着いたならお主の勝手にすればよい。

我はお主と契約を交わす者。
お主を護り生かすは我の役目。

.......だがお主が彼の者とこれから剣を交えるその中で死を望むというのなら、我はそれに従おう。
それもまた、我の役目ぞ"




水竜は暫く何も言わぬまま私を背に乗せ飛び続けていた。
そして風を切り雲を越え、私がちょうど遥か向こうが心なしか明るくなってきたのを感じた時、水竜は前を見据えたまま私に言った。



水竜.....。

その言葉に励ましの意味があったのかは分からない。
だが私は何だか背中を押された気がして、水竜の背にギュッとしがみつき小さな声で『ありがとう』と言った。








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