mirage of story










保たれてきた高度がゆっくりと下げられていく。
大地との距離が近くなり、そして彼の姿も鮮明になる。

降りていく最中、少し離れた所に馬の姿が見えた。
きっと彼の馬なのだろうと私は思った。





―――ッ。
そんな光景を見つめながら、水竜と私は風と一体化していて風と共に大地に舞い降りた。


私は水竜の背から降り、大地に足を付ける。
暫く空に居たせいか、足から伝わる大地の感覚が少しだけ懐かしく思えた。






"幸運を祈る"


水竜は短くそう言うと、私を大地に残して再び空へと舞い上がった。

力を貸す気はないのだろう。
そう、私が一人で彼に向き合うことを望んだから。


きっと空の上。
雲の向こう側から私のことを見守ってくれているのだろう。

私は空を見上げて、もう姿が見えなくなった水竜に深々と一礼をした。









―――フッ。
彼に呼ばれ怖ず怖ずとやってきた馬が、その気配を察したようにフッと水竜の消えていった空を見上げる。

彼はまだ私達の存在に気が付いてはいないようだったが、空を見上げる馬に釣られるように彼もゆっくりと空へ視線を向けるのが見えた。




だがもう水竜は空の彼方で、姿は見えない。
そんな空を凝視し不思議そうに目を潜める彼の姿を、私は少し離れた場所から静かに見つめた。













...........。

何もない空。
彼はその空を暫く見つめて、何も見えない空に興味が途切れたように視線が下へと向けられる。




視線を下げる。
ただそれだけのありふれた行動なのに、私の鼓動は速くなった。

下がる。下げられる視線。
そしてその蒼い瞳が、遂に私の姿を蒼い彼の瞳が捉える時が来る。








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