mirage of story










「援軍は......隊長の所にちゃんと援軍は送ったの?」



頭の中の嫌な予想を無理矢理に振り払い、キトラは訊ねる。

だが返事はなく、ただ皆は目を逸らして首を横に振った。








「どうして!?
一人なんて無茶だって皆だって分かってたはずなのに―――。

どうして誰も隊長と一緒に行かなかったんだよ!?」



「.........隊長ならやれると思ったんだ。

隊長が本陣を離れるというなら俺達が本陣を離れるわけにはいかない。
それに隊長は強い、だからあの人なら.....大丈夫だって、そう思ったんだ」





皆が一様に目を逸らす。
まるで今のこの状況の責任から、今それぞれの中で思い描かれる最悪の結末の責任から必死に逃れようとするように。







「......っ!もういい!

俺は隊長の所へ行く!隊長を助けに行く、迎えに行く!
あんたたちはそうやってずっと待ってればいい―――だけど俺は行くっ!」



「なっ.....何を馬鹿なことを!お前死にに行く気か!?

あの隊長でさえ戻って来れてはいないというのに、お前のような子供が一人でなんて。
本陣からの命令だ、死に急ぐのは止めろ」





「.........どうにかしようともしないで他人任せにどうにかなるのを待つ大人なんかより、自ら前に進もうと行動する子供の方がずっといいよ。

それに、隊長の居ない本陣なんて今じゃ何の意味も為さない。
今のこの戦場での俺達の指導者は隊長だよ―――だから俺は隊長の命令しか聞かない。


俺は、隊長の所に行く」








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