mirage of story
〜1〜










草も木も生えない不毛の地。

何も無い大地だけが広がる此処は、誰もが足を踏み入れたがらない名も無き世界の果ての荒地。




そう。
此処は遥か古から、この世界に存在する闇の中で最も濃い闇が存在する地。

この世界に存在する闇の根源であり、元凶。
全ての闇はこの地より生まれ、大地より滲み出しこの世界に哀しみや憎しみをもたらしてきた。


















「................どれほどこの時を待ち詫びたことか!」




そんな地に一人立つ男。
その男は大地から沸き上がる濃い闇にその身を晒し、空を仰いで笑っていた。

闇に染め上げられたような流れるような長い黒い髪が、波打ち揺れる。












「我が悲願が、ついに現実となる時ぞ....っ!」




地を轟かせるような低い声が嬉しさを堪えきれないのか震える。

それはまるでこの世の物とは思えない程に不気味。
彼も一人の人であるはずなのに、彼からは人の気配が感じられない。













「..........ついにこの忌々しく窮屈な、此奴の身体ともおさらば」



「我は―――我はようやく、本当の自由を手に入れるのだっ!

完全に自由となれば、もう何も我を止めることは出来ぬ。
ハハ....フハハハッ!」








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