mirage of story
一人自分以外誰も居ない大地で笑う。
大地から沸き上がる闇が全てその男に吸収されていく。
男は闇そのものよりも濃い闇と化す。
「よく見ておくといい。
お前が十八年前、世界の運命を狂わせてでも願った哀れな願いの結末を。
お前が願ったちっぽけで下らぬ愚かな願いのせいで崩壊していく、この世界の様を!」
不気味な笑い。
「――――なぁ、ロアルよ?」
男は。
哀れな男を取り込み浸食した残酷な闇は、まだ身体の奥底に眠る本当の彼に笑いながら言った。
(や.....めろ)
やめろ。止めろ。
お願いだから、止めてくれ。
闇に囚われた彼は、ロアルは意識の限り懇願する。
「何を今更。
この世界の崩壊、願ったのは―――お前ぞ」
違う。
違う、私が望んだのはこの世界の崩壊じゃない。
ただ、ただ私が望んだのは愛する者の命。
愛する者を救いたいという、人として当然の想い。
望んだのは、私が望み描いた未来は―――こんな未来じゃない。
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