mirage of story










一人自分以外誰も居ない大地で笑う。

大地から沸き上がる闇が全てその男に吸収されていく。
男は闇そのものよりも濃い闇と化す。




















「よく見ておくといい。

お前が十八年前、世界の運命を狂わせてでも願った哀れな願いの結末を。
お前が願ったちっぽけで下らぬ愚かな願いのせいで崩壊していく、この世界の様を!」



不気味な笑い。











「――――なぁ、ロアルよ?」



男は。
哀れな男を取り込み浸食した残酷な闇は、まだ身体の奥底に眠る本当の彼に笑いながら言った。










(や.....めろ)




やめろ。止めろ。
お願いだから、止めてくれ。

闇に囚われた彼は、ロアルは意識の限り懇願する。













「何を今更。

この世界の崩壊、願ったのは―――お前ぞ」





違う。
違う、私が望んだのはこの世界の崩壊じゃない。

ただ、ただ私が望んだのは愛する者の命。
愛する者を救いたいという、人として当然の想い。



望んだのは、私が望み描いた未来は―――こんな未来じゃない。








.
< 1,060 / 1,238 >

この作品をシェア

pagetop