mirage of story












「...........本当に、人とは愚かな生き物よ」




彼は嘆く。
だけれど、残酷な闇はそんな一つの言葉で彼の想いを切り捨てた。















「しかとその瞳に焼き付けるがいい。
罪な魂に刻み付けるがいい。

さぁ、最高のフィナーレの始まりだ」










(止めろぉお―――っ!)





ロアルは叫ぶ。
だけれど、その叫びが世界の空気を震わすことはない。

闇に支配された彼の身体は、その叫びが聞こえていないという如く気にも留めず、スッと手を自らの懐へと持っていく。




ッ。
そして取り出されるのは、何の変哲も無い飾り気無い質素な石。


これは彼がこの数年、シエラの持つあの指輪とは別に、血眼になって捜していたもの。
世界のごく一部で"竜の石"と呼ばれる、闇の竜の―――そう彼を飲むこの闇の封じられし魔力が宿る石。










「かつて封印され世界へと散った我が力。

ついにその全てが、今我の元に―――っ!」





そう。
その石は彼の、古に水竜と炎竜により地の底へと封印された哀れな竜―――創黒の竜の強大な力が、大地から染み出し結晶化したもの。

二匹の竜によって世界の各地に散りばめられた、力の欠片。
封印されし竜のその一部。



その石が彼の手によって、空高く掲げられた。










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