mirage of story
神が用意した本来の彼の運命は残酷なもので、この世に生きて産まれるというものではない。
彼は産まれる前に命を失い、この世界の日の目を見ることなく、その生涯を終える。
そして再びの命の循環の中に組み込まれ、また違う命としてこの世界に産み落とされる。
そしてまた神が用意した別の運命を生き、そしてその生涯を終えまた命の循環に還る。
目には見えないけれど、この世界の上で常に行われている生と死のサイクル。
そんなサイクルの中に、彼も例外ではなく自然に組み込まれていく。
本来は、そのはずだった。
だけれど、運命は捻じ曲げられた。
人という生き物の哀れで愚かな愛と欲望と、そんな人の弱さに付け込んだ闇の陰謀によって。
本来在ってはならない、死んだ者を蘇らせるという古よりの禁忌を犯して。
十八年前に、一人の父が願った愛する息子の生。
父自らを代償に、世界を代償に彼は生かされた。
それは決して彼の意志ではない。
だが今、時が経ち禁忌という過ちを犯した父子に制裁が下されようとしている。
闇に禁忌の対価を清算する時が来たのである。
「貴方に感謝はしません。
...........でも正直、貴方が与えた時間は俺にとってかけがえのないものです。
悲しいことも泣きたくなるような辛いことばかりだった。
でも、幸せな時だった。
十八年、貴方に生かされていた時間を俺は俺自身で考え行動して生きてきました。
生かされているその中で、俺は俺の意志で生きてきたんです」
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