mirage of story











頬からスゥッと血が流れる。







「...........」



その血を服の袖で軽く拭うカイム。

白かった服がほんの少しだけ赤くなる。
そんな血の滲んだ服を見つめて、僅かに瞳を陰らせる。
















(...........俺は、この闇に生かされている。

この血が今、俺の中を巡って俺がこうして生きているのも―――全部はこの闇の力なんだ)






自分から流れる血。
生きているからこそ流れる血と、それに伴うじんわりとした痛み。


水竜から教えられたから、分かってはいた。
受け止めたはずだった。



だけれど"生かしてやっている"というその言葉。
静かに深くカイムの心を刺す。


















生かされている。
それは決して"生きている"ではない、受け身の言葉。

自らの意志でない、他人の意志による生の在り方。










そう。
本来なら彼は―――本来在るべきはずの運命の上でカイムは、今此処に存在してはならない存在。



彼はとっくの昔にこの世界から消え去るはずだった存在だった。

十八年。長くて短い年月。
彼が今まで当たり前に過ごしてきた時間は、本来在ってはならないものだった。









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