mirage of story
落ちる涙。
その涙を無理矢理に抑えたシエラは、手に持った紙切れをクシャリと軽く握る。
「..........カイムは、今何処に居るんですか?」
そして先程も問い掛けて答えが返ってこなかった問い掛けを、もう一度今度は言葉に強く力を込めて言った。
あやふやな答えは許されない。
シエラの声には、そんな強い気迫が込められていた。
「.........今この世界の中で俺達人が立ち向かうべきものは、一つしかないんじゃないかい?
なぁ、嬢ちゃん?」
黙って会話を聞いていたジェイドが、ジスの代わりに答える。
そして身をくるりと翻してスッと彼が指差す先。
「あの場所しかないだろう?」
ドドオォーンッ。
差す指は響き渡る攻勢の轟音する方へ。
闇が渦巻く、世界の終わりの最前線へ。
この場に居る皆が、その先を見つめて息を呑んだ。
「...........それでだね、お集まりの人間魔族まとめて兵士の皆さん?
実は非常に言いにくいことなんだが今から俺達もあそこに向かっちゃおうと思ってるわけ。
ついでに拒否権はなし。
まぁ、決定するのは俺じゃあないんだけど」
ゴクリッ。
皆の息を呑む音が響く中で、ジェイドの緊張感の欠片もない軽い口調の声が続く。
「..........作戦を練って勝てる術を見つけるなんて言っても、そんな都合のいいもの在るわけはねぇんだわ。
何しろあんな奴等が相手だからなぁ。
選択としては二つ。
犠牲を出さずに皆で世界と運命を共にするか―――それともどれだけの犠牲を払ってでも足掻いて戦ってみるか。
どっちを選ぶのかは、嬢ちゃんが決めることだ。
嬢ちゃんが決めた道が俺達皆の最後の作戦。
俺達はその作戦を、ただ実行するだけだよ」
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