mirage of story
生かされていた。
その言葉が耳につく。
「世界がこうなってしまった根幹の一番深い所に俺の存在が居る。
竜は父と俺に命を与える代わりに、父を利用して自らの目的を果たすことを条件に契約をした。
その目的は.......人が築き上げてきたこの世界を破滅させることだった。
つまり、まだ竜の目的は目前で成されていない。
父が創黒の竜と交わした契約は、完結していないんだよ......まだ契約に縛られたままなんだ。
竜の目的が成されないままに父が、ロアルが死ねば交わされた未完結な契約は破棄される。
契約で生かされる俺の命は―――元の運命の通りのままにあの時失われていたことになるんだよ」
今度は言葉に詰まることなく、静かな声で淡々と語る。
まるで他人事のように。
普通ならばとてもじゃないが冷静では居られない内容。
それを語るカイムはその事実をもう受け入れて、そして覚悟しているのだろう。
そうでなければ、こんな揺らがない真っ直ぐな瞳では居られない。
そんな彼にその言葉に、シエラもライルも声を出すことが出来なかった。
「俺があの村で生まれ過ごした時間も、貴方と過ごした時間も感じた想いも―――全部消えるんだ。
世界そのものから全ての人々の記憶から、そしてシエラ貴方の記憶からも俺という存在は消える。
契約が破棄されれば、俺と貴方も出逢わなかったことになってしまう。
今まで確かに在ったものが全て、元から無かったことになってしまう」
.........。
静かだった声色はそこまで口にし、一旦途切れた。
ほんの数秒の間。
その間を置いて再び口を開くカイムの声色は、心なしか数秒前よりも震えていた。
「消えるだなんて、自分の存在が忘れ去られるなんて凄く怖い。
出来ることなら嘘であって欲しいし、逃げ出したい。
.........でもこれは現実。逃げ場もない。
父を討たなかったら、俺が存在し続ければこの戦いは世界が終わるまで終わらない。だからやらなくちゃならない。
もう仕方がないんだよ」
.