mirage of story
「...............やっぱりこの決着は、俺が着けなくちゃいけないんだよ。
じゃなければ、きっとシエラが悲しむことになる。辛い思いをすることになる。
きっと貴方は自分を責める。
貴方は優しいから。
.........それが例え貴方が全て忘れ去ってしまうことであっても、俺は貴方にそんな思いをさせたくはないんだ」
例え貴方が全て忘れ去ってしまうことであっても。
その意味深な言葉がほんの少しだけ強調されて聞こえた気がした。
その言葉に含まれる意味。
それはロアルが自分の父親だと彼女に打ち明けたつい先程のあの嫌な感覚と似ているもの。
だがしかし、あの時よりも格段に濃い感覚だ。
そう。
まだ彼には打ち明けねばならないことがある。
大切な人に、シエラに。
酷な現実を。真実を。
ゴクリと息を飲み込む。
「.........ロアルを討てば、俺もこの世界から消える」
「どういう、こと?
幾ら父と子という繋がりがあったって、一緒に死ぬなんて――――」
「死ぬんじゃないんだ。
消えるんだよ、俺っていう存在が」
「え.....それってどういう―――――」
意味が判らないのだろう。
言葉の意味が理解出来ないのだろう。
シエラもライルも、目を見開き彼を見つめ直す。
「俺は本当は........今此処に存在しちゃいけないんだ。
俺が本来持って生まれた運命の中では、此処で今生きてはいなかった。
俺の命は生まれたばかり、赤子の頃に本当ならば尽きていたんだよ。
それを父が、ロアルが変えた。
世界の理を破って禁忌と呼ばれるものを犯して、自らの全てを犠牲にして闇と―――あの創黒の竜と契約をして運命を捻じ曲げた。
全ては俺の命を蘇らせるために。
竜は俺に再び命を与えるその代わりに、父を陰謀を現実にするための駒にして支配した。
俺はそんなこと何も知らずに生きていたけど、俺は今までずっとその契約の上で生かされていたんだ」
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