mirage of story
"人という生き物は、やはり我を不愉快にさせる。
.....早々に消えよ、永遠にな"
――――。
ザンッ......。
シエラ達の記憶の最後に残ったのは残酷な声と、何かを断ち切る鈍い音。
衝撃で地面に倒れ込む。
シエラは反射的に閉じた瞳を開けることが出来なかった。
何故なら、彼女には斬撃の衝撃だけで何の痛みも迸らなかったから。
目を閉じても機能を失わぬ嗅覚が、彼女の嫌いな匂いを―――鉄臭い血の匂いを感じたから。
衝撃で倒れ込み地面へと突いた手に、生温かいヌルリとした感触を感じてしまったから。
でも。
でも、それでも開かなければ。
いつまでもこうして瞳を閉ざしていても、何も変わりはしない。
もしかしたらこれは長い長い悪夢で、瞳を開ければ覚めてくれるかもしれない。
もしそうならば、瞳を開かなければ覚めるものも覚めてはくれない。
「...........」
ッ。
最後の記憶から数秒後、瞼を持ち上げる。瞳を開ける。
その数秒は彼女には長く感じられたが、目を開けた先に真っ先に見えるまだ舞い上がって止まない土埃がその時の短さを彼女へ教える。
「―――ッ」
見えるのはまだ土埃だけ。
それなのに彼女の中を駆け巡る強烈な悪寒に、本能的にゾクリと鳥肌が立つ。
その悪寒は舞い上がる土埃が止んだ先に在るものを、予見させる。
悪いことであるのは、間違いは無い。
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