mirage of story
ギイィンッ!
"大人しくしていれば、苦痛を受けずに済むものを"
ザンッ。
残酷な声と残酷な音。
甲高い金属音と、肉が引き裂かれる鈍い音。
「ヴオォアァ.....ッ!」
荒く痛々しい息遣いと、言葉にならない雄叫び。
カイムらしくない、彼らしくない獣のような猛々しい叫び。
ギイィンッ!
ザンッ!.....ッ!
「やめてっ!」
「行っちゃ駄目だ」
カイムは剣を握り斬り込み続けた。
斬られても斬られても、どれだけ刃がその身体を切り裂こうとも―――今度は倒れなかった。
地は紅く染まった。
紅い血溜まりが幾つも出来た。
空気に彼の匂いが、彼の血の鉄臭い匂いがこびり付いた。
「嫌ぁあッ!
カイム!カイムッ!
止めて!お願い行かせて!」
ザンッ!
目の前で大切な人が、残酷に斬り捨てられていく。
彼が、ボロボロになっていく。
カイムを助けに行こうと暴れるシエラを、ライルは何も言わずに抑え食い止める。
それを振り解こうと彼女は更に暴れるが、男の力には適わない。
彼女のオレンジ色の髪が乱れ舞う。
彼女はカイムの名を呼び泣き叫ぶ。
"クッ!しぶといぞ!
まだ倒れぬか小僧!"
「俺は........俺は、貴方が死ぬまで......倒れ、ない!」
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