mirage of story
「嫌.....嫌ぁあっ!」
――――キンッ。
歓声に混じる一筋の絶叫。
それと同時にそんな彼女を襲うのは、脳の深く奥に伝わる痛み。
彼の消えた空間を見つめる視界が、グラリとぶれる。
目眩と頭の痛みに立って居られない。
ッ。
頭の痛みと揺らぐ視界、遠退く意識の端で咄嗟に掴んだのは隣に居たライルの服の裾。
途切れる意識の前に見えたのは、掴んだ服の裾とそれ越しに見えるカイムが居た空間。
それ以降、途絶えた意識。
次に目覚めた時にはもう血に汚れた戦場ではなく、真っ白なシーツの敷かれた清潔なベッドの上。
その時にはもう、彼女の中に彼はもう居なかった。
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