mirage of story
世界はまだ、戦いで闇や人から受けた深い傷が生々しく残る。
戦いの時代が終わったとはいえ、奪われた命はもう戻っては来ない。
今もこの世界の何処かで沢山の人が、そんな戦いで失った大切な人を想い傷付いている。
会いたくてももう会えない人を想い、夜が巡り来る度に泣く人も居る。
世界が受けた傷も人が受けた傷も、まだ癒えることなく暗い闇の中に堕ちている。
まだ救われない。
「また来よう。二人で、この場所に。
....絶対にな」
シエラの中で欠落しかけた記憶の中で誰かが、彼が言ったのと同じ言葉だった。
また来よう。
二人で、この場所に。
言葉を発するその人もそこに込められた意味も、前とは違う。
「うん―――絶対に」
だけれどそのどちらもが、シエラの心に温かく響く。
ライルが言ったいつの日かの彼と同じ言葉に、シエラは強く頷いた。
それから暫く。
シエラとライル二人の王は国の未来を―――カイムという国の未来を想い、束の間のゆったりとした時間を二人共に楽しんだ。
花の香り溢れる.....懐かしく優しいこの場所で。
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