mirage of story











"――――――――さぁ、折角の良い日和。

今の君達の身では、こうして自由に外を見ることは中々出来なかろう?

........ゆるりと身を休めるといい。
君達にはまだこの世界をかつての美しき世界へと復興させるために、まだまだ働いて貰わねばならないのだから"





竜達は一息大きく吐き落とした。
それから先程よりも穏やかさを増した声で、話の道を変えた。

もうこの話は終わり。
言葉で言った訳ではないが、そういうことなのだろう。



シエラもライルもそれを察して、竜達の言葉に頷く。

ッ。
すると見つめていた何も無い空間に在った竜達の存在感が、スッと引いていくのが判った。

















「―――結局、判らず仕舞いになってしまったな」



竜達の気配は消えて、シエラとライル二人だけに戻った空間でライルはそう言い軽く苦笑いを零す。



そう。
結局記憶の中の違和感は解決されないまま。
記憶の中には不自然に、ぽっかり穴の開いたまま。

何も埋めることは出来なかった。
竜達に問いても、つい先程と何も変わらない。








「......そうね」



だけれど、二人の心は先程よりもずっと晴れ晴れしかった。
苦笑いをするライルに、シエラも笑って答えた。


もう判らないから仕方がないという諦めからかとも思ったけれど、そういった感じでもない。

結局は何も判らなかったというのに、この違いは何なのだろう。
二人にもそれは判らなかったが、気にはならなかった。








―――。

改めて周りに意識を移してみる。
穏やかな空間に咲き誇るレイリスの花と優しい香り。



空間をぐるりと取り囲む緑茂る木々の隙間から差し込む木漏れ日。

あぁ、平和だ。
漠然と二人は感じる。








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