mirage of story
〜11〜










「――――ここは?」




シエラが閉じられた目を開ければ、目の前は不思議な世界だった。
何もない、誰もいない世界がそこには広がっていた。












(私、さっきまで村の中に居たはずなのに....)




―――そう。
ついさっきまで、燃える故郷の中にシエラは居たはずだった。





燃える自分の故郷に、目の前に居るライル。
その後ろには、忘れることの出来ないあのロアルの姿。

ライルの深い哀しみ、怒りに......シエラの戸惑い、絶望。




そして、目の前にまで迫り来るライルの剣。











そこまでは鮮明に覚えている。








「ここは、何処なの?」




シエラは、自分の置かれた状況を確認するため辺りを見回す。

すると在るのは無。
辺りには何もなく、ただどこまでも白く澄んだ世界が広がっていた。













(――――私....生きてるの?)



シエラは思わず、そう思ってしまった。
実際、今のシエラには自分が生きているのか死んでいるのかさえ、分からなかった。





脳裏に残るのは、ライルの哀しい表情。
迫り来る剣。自分の名を呼ぶ誰かの声。










だが、その後の記憶がない。

気が付いた時には、シエラはもうすでに此処にいた。












グラリッ。






「―――――あ.....」




と頭の中でそんなことを考えていると、突然に辺りの景色が歪んだ。
 
 
 




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