mirage of story
「―――そう。だから早く行きなさい。
もうあなたは....一人じゃないんだから」
もう、ほとんど見えなくなってしまったエルザの声が
だんだんと遠くなっていくのが分かった。
でも、シエラはもう死にたいだなんて思ったりしなかった。
自分のことを想ってくれる仲間の存在を、エルザのおかげで、改めて知ったから。
(私は......もう、一人じゃない)
シエラは、そっと首にかけたあの指輪を握り締めた。
「――――今、行くよ.....カイム!!!」
次の瞬間、目の前を闇が支配した。
光に満ちた世界から、光のない闇の世界へ。
(.......何も見えない)
シエラは光を求め走り出した。
早く仲間の元へ.....その一心で。
「.......カイム」
この果てない闇を、
シエラはただひたすら遠くの方から微かに聞こえる仲間の声を頼りに走り続ける。
こんな闇も、仲間が居てくれれば恐くなんか....ない。
「カイムーーーッッ!!!」
仲間を想う気持ちが高まるほどに、
遠くに聞こえていた自分の名を呼ぶ声が近くなっていく......。
―――そして。
一筋の光が見えてきた。
その光は次第に辺りを包み込み、シエラをも包み込む。