mirage of story
「シエラ、あなたはどんなに辛くても生きなければならない。
――――あなたのことを大切に思ってくれている人が
まだこの世界に居るのだから......」
シエラはエルザを改めて見つめた。
......そこには、大好きな優しい温かい笑顔があった。
「あなたを想ってくれる人が居るかぎり、あなたは死んではいけないのよ。
―――それにあなたは生きて......真実を見届けなければならないから」
と、エルザはそこで言葉を止めた。
「――――もう時間がないようね....」
エルザの言葉に、シエラは辺りを見回した。
一面の白い景色だった辺りが、大きな波を描くかのように歪み始めていた。
「時間がないって.....母さん、どういう....ッッ!?」
エルザに視線を戻したシエラは、驚いた。
―――エルザの姿がもう消えそうなまでに透けていたのだから。
「.....さぁ、行きなさい。
仲間があなたを呼んでるわ―――
あなたはあなたを想う仲間と.....真実を見届けなさい」
姿が消え行く中、エルザは言った。
それはシエラの大切な人の言葉であり、
シエラを一人の娘として愛した.....母の言葉だった。
そして、耳を澄ませば聞こえてくる.....自分の名を呼ぶ声。
聞き覚えがある、ちょっと懐かしいこの声は。
「......カイムが私を呼んでいる....」