mirage of story
――――。
たとえ嘘をついたとしても目の前に居るこの炎竜には何もかも見透かされる、そう感じた。
だから彼は素直に答えた。
"強くなりたい?
お前は、己のため力....強さを我に求めるために此処に居るというのか"
「......違うよ。俺は自分のために力なんて求めたりなんかしない。
ただ、俺は」
一瞬沈黙が走った。
「......俺は、アイツのために。
ルシアスを守っていくための強さが欲しいんだ。
―――魔力がない出来損ないのままの俺じゃ、これから先、何かあってもルシアスを守れないんだ」
".......お前は、他人のために己の強さを請うのか?
これから先、どのような関係になるかも分からぬ相手に今、ひとときの感情で.....その者のために力を求めるというのか?"
炎竜の強い眼差しが、ライルへと注がれる。
薄く笑い、何かを試している。
やはりそんなことを思わせる瞳だ。
「......一時の感情なんかじゃない、絶対に。
百年だって千年だって経っても変わらない。
俺はすべてを失ってでも、ルシアスを守りたいんだよ。
―――この想いはいつまで経っても変わりはしない。だから、一時の感情なんかじゃない」
ライルは炎竜を、しっかりと見据えた。
「――――好きなんだ。
大切なんだよ、それほどに....ルシアスのことが」
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