mirage of story
そんなことになるのなら、誰にも告げはしないとライルは思った。
誰にも告げなければ、自分に力があったのだということを証明出来ない。
また今まで通り....ライルのことを力のない出来損ないと皆は言うだろう。
―――でも、ライルの中では今までとは違う。
誰にも知られなくとも、自分には力があるのだと分かったから。ルシアスを守るための、力を得たのだから。
もう、何も恐れることなんてないんだ。
いずれ時が来る時、それまでは誰にも言わないことにしておこう。
それが皆にとって最善のことだ。そう思ったから。
「あぁ、分かった。
言わない、時が来るまでは。
だけど、もしアイツが.....ルシアスが危険な目にあって救わなきゃならない時には、何があっても力を使う。
それでもいいなら」
『―――いいだろう....』
そしてライルと炎竜は、お互いの意志を確かめ合うかのように揺らめく炎の中で笑った。