mirage of story
〜2〜 






――――。
目が覚めてふと隣を見る。

半分体を起こしたまま。
目に映ったのは遠くを見つめるそんな彼女の姿。 









(.........シエラ)



目に映る愁哀に満ちた彼女。

ッ。思わず彼女の肩に伸ばし掛けるけれど、フッと舞い落ちる思考にその手を止める。








(暫くそっとしておこう。
........きっとまだ心の整理もつかないだろうから) 




―――――。
今俺の前にいるこの少女は大切なものを失った。

大切な人達を。帰る場所を。
澄んだ水色の瞳のその前で、彼女はその全てを奪われた。


しかも残酷にも彼女からそれらを奪ったのは、彼女の義母を奪った憎むべき仇。
彼女は再び、それも同じ者に魔族に幸せを奪われたんだ。 







(..........)



今の彼女と彼はとても似ていた。
酷似していた。


........。
同じ状況だった。

全てを魔族に奪われて、帰る場所すらない。 
ただ魔族たちに復讐を誓って、ただ必死に生きている。



ッ。いろんな意味で二人は仲間。
同じ目的を抱く仲間でもあり、同じ境遇の仲間でもある。







(仲間、か)



カイムは再びシエラの方へと意識を戻した。




 


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