mirage of story
〜3〜








追う側が狩りへの一歩を踏み出した。


ッ。

ちょうどその頃。少し離れた場所。
こちらは追われる側。
この先が非常に不安な二人はまだ森の中をひたすら歩き続けていた。

彼等は追う者の影が迫っていることをまだ知らない。











「えぇっと、シエラ?
.......此処さっきも通らなかったかな?」



暫し沈黙のままに森の中を進んでいた二人。

そんな沈黙の中、歩きながら右に左に上に下にと辺りを見回すカイムが堪り兼ねたように言う。


ッ。
決して責めるような言葉ではなかったが、シエラはその言葉に眉を一瞬ピクッと動かす。







「そ....そ、そ、そんなことないような気がするはずだから大丈夫よ!」



カイムの言葉にシエラは軽く笑いながら、カイムを顧みて指摘を曖昧にというか無理やりに否定する。

手を上下に振ってワタワタとさせて、最高に吃りながら言う。
カイムの指摘に心当たりがあるのだろう。
その言葉には信憑性も説得力も無い。





........。

本当はカイムの指摘通りシエラにもこの道を通った記憶はあった。
しかもさっき通ったなんていう甘い次元ではない。
シエラの記憶が確かならもうこの道を通ったのはこれで五回目である。 












「いや、でも俺....もうこの道、五回くらい通った気がするんだけどな」



「......」




シエラの心で激しく正解音が鳴る。
やはりさすがにカイムも気が付いていたようである。






「あは....あははは.......」



気まずそうに笑いながらスッと逃げるように視線をカイムから逸らした。






「こ....今度こそは大丈夫!
この道なら、絶対着くから!」



シエラはカイムの不安を無理やり打ち消すように拳を振り上げ勢いに任せてカイムの手を引く。
今まで散々カイムを引っ張りまわしてきたこともあり、シエラにはもう何だか引き下がれない意地があった。

勿論この道が正しく目的地に辿り着く確証などは全くないのだが。
とりあえず、負けるものかと勢いで前に進んでいく。




 



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