mirage of story
 






 
 
 
この二人が、朝を迎えて再び此処に戻ってきた理由。
それは追跡。討伐。
またの名を復讐。


今、此処に居る理由はそんな人間的な憐れな感情が彼等を動かしたからだった。

取り残したはずの獲物を求めて。
まるで獣のように飢えた彼等はやってきた。













「お前のその意気心強いぞ。
........行け、ライル。私も力を尽くそう」


「はい」





心に闇を抱いた人の形をした獣が二人。
取り逃した獲物の首を狙って、獲物の潜むこの地に放たれる。

二人はお互い背を向けるとそれぞれの方向に歩み出す。 
静まり返る大地の上を獲物を追う獣のような足取りで。
目と鼻の先に居るはずの獲物を求めて這う。








さぁ、狩りが始まる。

追う者と追われる者の命を懸けた長い永い劇の始まり。
人として生まれたものの憐れで滑稽で、それでいて繊細な哀しき憎しみの劇が。

運命を抱えた者達は出逢ってしまった。
出逢わなければ始まらなかった。
二人は、彼等は自らの運命がこの出逢いによって大きく傾いてしまったことすら知らない。





この劇の主役は、両方。
役者はこの世界にある全て。
シナリオは神の気紛れの何とも理不尽な劇の行方は、誰も知らなかった。

これは彼らが作り上げて行くドラマ。
誰も邪魔は出来ない。




この時はまだ追う者にも追われる者にも、まだその互いの姿はそしてこの物語の行く末は見えてはいなかった。





 


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