mirage of story
「─────ロアル様?」
と、その時だった。
背後から声がして、瓦礫に手をかけたままの状態で止まる。
その止まった反動で、小さな石と化した瓦礫がパラリと落ちた。
ロアルには、その自分の名を呼ぶ声の主を、見なくとも分かっていた。
「ライルか」
「はい.....ロアル様、こんなところで何をしてらっしゃるのですか?」
ライルは疑問の視線を投げ掛ける。
「.....少々疲れてしまってな。
少し、休んでいたのだ」
ロアルはそう言いながら立ち上がり、ライルの方を振り返った。
そんなロアルの表情には、もう笑みはなくいつもの無表情な無感情な魔族の王としてのロアルに戻っていた。
「そうですか」
「...............それで、ライルよ。
奴等は見付かったか?」
ロアルは、あまり今のこの状況に触れられたくない。
他人に知られたくがないために、このライル一人しか連れて来なかったのだから。
そう心の片隅で思うロアルは、自分のことからライルの意識を反らそうと、そう話題を変えた。
まぁ、ロアルの本当の意図を知らぬライルにとってはこちらが本題なのだから不審には思われないだろう。
「......申し訳、ありません。
奴等をこの近くの森の外れで見付けました。
しかし不覚にも奴等の術中に填まり───取り逃がして.....俺の力が、及ばなかったばかりに」
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