mirage of story
ライルは、そう言うとロアルの前に跪く。
膝を付き、頭を深々と下げ自らの君主の前に膝を折った。
そんなライルの表情からは、自虐と悔恨の色が伺える。
「────処分は覚悟の上です。
大切な.....指輪を取り返すチャンスを俺は、また無駄にしてしまったのだから」
乾いた大地。
ライルの地面に衝いた手のひらが、感情の高ぶりで大地を掴み....握り締める。
「.......ですが、出来ることならお願いします。
あの女を、シエラを討つチャンスを俺にもう一度!
この身の全てを懸けて、必ず果たします.......果たして見せます」
下に向けていた顔を上げれば、そこにはロアルが今まで見たことのないようなライルの真剣な表情があった。
彼は任務に忠実だ。
そして何より、人間に対しても憎しみがある。
だからこそ、またこの絶好の機会にシエラたちを取り逃した自分が許せないのだろう。
「────俺はあの女を討つまでは、何が何でも引けません!
俺が生きてくためには、それしか残されていないんです。
それしか、ないんです」
一瞬の沈黙が二人の間を流れる。
「.......俺はもう───憎しみを糧に生きていくことしか出来ない」
ライルは自分の眼に熱いものが溜まってくるのを感じた。
それは自分に対しての戒めの涙でもあり悔しさの涙でもあり、なによりライルの心の涙。
その涙は、冷たくて熱かった。
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