mirage of story
〜1〜








「─────.....これは」




中に足を踏み入れた二人の目に飛び込むのは驚愕の光景。

――――。
それは今にも崩れ落ちてしまいそうな廃墟の街。
ボロボロの壁。
色彩を失った色味の無い寂れた街並み。

シエラとカイムは、思わず言葉を失った。 








「........一体何があったの?」




零れるのは驚きと疑問の言葉。

動揺に満ちたその言葉に、カイムはもう一度辺りを見回す。
ッ。
やはり見間違いではなくこの街の状況は変わらない。









「............俺は初めてこの街に来たから判らないんだけど、前に立ち寄った時もこんな感じだったのかな?」



「ううん、違うわ!こんなの私の知っている場所じゃない!
........前に来た時には、こんな風じゃなかった。
人だって沢山居たし、建物だってこんな.....」




余りに酷い街の様子に、シエラは言葉を飲み込み周りを見渡す。

彼女が描いていた風景。
今目の前に広がる風景。
一致するはずの二つはあまりにも違いすぎていた。











「......とりあえず、もっと奥まで進んでみよう」



「えぇ」




ッ。

変わり果てた街の姿。
二人はゴクリと一つ息を飲み込み止まりかけていた足を再び前に踏み出し始める。


―――――。
今彼女達が我が眼を疑い歩いているのはランディスという街。

彼女の暮らしていたあの村から二日程歩き辿り着く人間達の街。








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