mirage of story
「は、はい......あの」
答える何処か怯えたような声。
―――。ッ。
それが聞こえたかと思うと、暗闇だった廃墟の奥にポツンと一つの灯りが灯る。
「!」
その灯りは、少しずつ近付いてくる。
ユラリユラリ。
小さな炎が揺らめく。
その揺らめく小さな炎は二人から幾らか離れたところで止まり、それと同時に闇の中にうっすらとぼやけた青白い人の顔が浮かび上がる。
「────ッ!嫌、お化け!
きゃっ!成仏して下さい!」
その浮かび上がった血の気の無い青白い顔。
しかも此処は廃墟の中というそんな相乗効果もあり、不気味なことこの上無い。
彼女は再び飛び上がりカイムの後ろに隠れる。
まるで獣に怯える小動物のように彼の背中にピタッと張りつく。
「えっと、あの......?」
「嫌!
安らか眠って下さい!成仏して下さい!悪霊退.....」
「少し落ち着いて!落ち着いてくれって、シエラ!」
彼女はどうもこのような怖いものが苦手らしい。
ヒィッと息を飲み込み彼女は叫び、それを制そうと彼も叫ぶ。
「シエラ、一方的に嫌がるのはこの幽霊さんに失礼だよ!
ちゃ、ちゃんと話を聞いてあげないと成仏出来るものも出来ない」
「........」
何か指摘する場所が、違うような気がするのは思い過しだろうか?
言っておくけれど、彼は至って真面目に発言をしている。
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