mirage of story
 

 
 
 
 
 



「.....。
私、ちゃんと生きているのですけれど」



夫婦漫才を思わせる二人のやり取り。

........。
闇に浮かぶ青白い顔のその人は暫くポカンと見つめ、それから堪り兼ねたように口を開いた。




........。
そしてその人は少し前に歩み出る。
そして持っている灯りをスッとずらして、光を全体へと広げる。











「.....。
ちゃんと足がある」



その姿を確認にホッと胸を撫で下ろす彼女はようやく安心したのか叫ぶのを止める。
そして隠れていた彼の背中から顔を出し、それからゆっくりと出てくる。







「......ごめんなさい。
いきなりこんな廃墟の中から出てきたから、つい幽霊かと」



「い、いいえ。
無理もありません、このような廃墟ですもの」




光が映し出すのはその人の全貌。
中年に差し掛かったくらいの、少し怯えた様子の人間の女性。

その女性は怯えた声色のままに薄暗い中で二人を一瞥して会釈をする。









ッ。



「あら.......もしかして貴方」




会釈をし顔を上げる。
それからすぐに何かに気が付いたようにハッとして、その人は二人を―――正確にはシエラをもう一度見た。









「貴方もしかして.........シエラちゃん?」



二人は驚いた。
ついさっきまで幽霊だと思っていたその人が、まるで思い出したようにシエラの名を口にしたのだから驚かないはずは無い。 







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