mirage of story
(魔族は、本気でこの世界に居る全ての人間を────消し去ろうとしてるのか?)
戦争は憎しみの連鎖。
殺し殺され......また殺す。
いつまでも続く。
哀しみや憎しみの、負のサイクル。
人は何かを失えど、得るものは何も無い。
そんな理不尽な巡り。
(この街やシエラの村みたいに、他の土地に住む人間が......次々に消されていく。
罪のない人達をも虫螻同然にしか思ってないんだ)
カイムは唇を噛み締める。
薄い唇の皮は、カイムの感情余った力に破れて口の中にじんわりと血の味が広がった。
「..........これから先、どうするつもりなんですか?
魔族は卑劣です。
ここまで弱らせた人間の街をこのまま放っておく真似はしない筈です。
このまま、されるがままに黙っているわけないですよね?」
カイムは、我慢出来なかった。
今、魔族たちがこの街に、そして人間に対してしていることが。
そして今の状況を黙って見ていることも。
カイムには我慢できない。
「........私達が、あの魔族たちと戦ったところで勝ち目などないのですよ。
あと少し時が経てば、私の術は効かなくなる。
そうなれば、私達は果てるしかないのです。
これが、運命なのです」
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