mirage of story
「......逃げ延びた者たちは、一つに集まりこの場所に逃げ込みました。
ここは私の家。
この街、いやこの世界でもう数える程に少なくなり忘れ去られ掛けた聖術の使い手である私の家です。
聖術は人間の力。
魔族を惑わせる、魔力を押さえ込む力があるのです。
奴等は私達を見つけられず一旦退きました。
だが、まだ夜な夜なやってくる。
────奴等は本当の悪魔。
私達を皆殺しにしないと、気が済まないようですな」
魔族。ロアル。
シエラの中に、憎悪が満ちてくる。
沸々と身体の奥から込み上げてくる。
魔族の存在。
それは、やはり人間の敵。それ以外の何でもないようだ。
街の様子。
そして、長であるこの老人の話。
改めて、シエラはそう思った。
「今は、私の術で何とか隠れていますが......もう長くは保ちそうもない。
先程も申し上げたが聖術は今や廃れ行く消えかけた術。
使える者も私の知る限りでは、もう居ない。
この街が本当の廃墟と化すのは時間の問題.......これがこのランディスの街の現状です」
今この街が冒されてる状況は、思っていた通り。
いや、それ以上に深刻だった。
少しの猶予も許されない。危機迫るもの。
「ロアルの手は、この街にも及んでいるのか....っ!」
ドンッ!
カイムは、ロアルたちに対する憎さの余り拳をテーブルに叩きつける。
普段穏やかな彼にしては、驚くほどに荒々しい行動だ。
皆、そしてシエラでさえも思わずビクッと肩を震わす。
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