mirage of story
何も出来ないまま黙って見ているのは、もう嫌だ。
嫌だ。
嫌なんだ。
自分の大切な人が消えていく時、何にも出来なかった自分の無力さ。
そして込み上げる後悔。
あんな思いはしたくはない。
「.......何か、俺達に出来ることってないですか?」
何か、魔族たちの暴走を止めるために。
罪のない人たちを死なせないために。
何か出来ることがあるならば、やらなければならない。
カイムは、そう思って気が付いた時にはそんな言葉が零れていた。
「──────いえ、お気持ちだけ頂いておくことにします。あなた方を巻き込む訳にはいきませぬ。
さぁ、長い話にお疲れになったことでしょう。
狭い所ではありますが、今夜はごゆっくりお休み下さい、旅のお方。
そして、なるべくお早くこの危険な地からお離れ下さい」
老人は、二人に微笑みかけた。
笑ったその拍子に、顎に携えた髭が悲しげに揺れる。
その投げ掛けられた笑みがあんまり哀しくて、シエラとカイムはそれ以上、何も言うことが出来なかった。
ただ揺れる蝋燭の灯だけがこの空間で唯一、明るく煌めいていた。